紅の葬送曲


「私を責めるなら好きなだけ責めて頂いて構いません。でも、寿永隊長が生きていることだけは信じていてください」





私はベッドから降りると、彼女の前に正座をして頭を下げた。





「お願いします」




今の状況を考えると頭を踏まれてもおかしくはない。





それでも、彼女に寿永隊長が生きていることを信じていて欲しかった。





彼が愛されたいと願った母親である彼女に……。






「……もう良いわ。責める気にもならない」





頭上から衣擦れの音がしたかと思うと、目の前から彼女の気配が無くなった。





顔を上げるとやっぱり操様は入り口の傍にいて、病室を出る前に一度足を止めていた。






「浅井さん……だったかしら?」





「は、はい!浅井紅緒と申します」





「貴女、凌の補佐官なんでしょう?なら、簡単に土下座なんてしないで。簡単に土下座する女を補佐官にするなんて噂が立ったら寿永の名に響くわ」





彼女の言葉に、私は慌てて立ち上がった。






「も、申し訳ありません……」





「……寿永の跡取りの補佐官ということを自覚なさい」




そう言い残して操様は病室を出て行った。





え、今何て言った?






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