紅の葬送曲
「浅井さん!」
すると、興奮したように汀様が近付いてきた。
「凄いですよ、浅井さん!兄さんの補佐官であることを認めさせた上、兄さんが生きていることを信じさせるなんて!」
やっぱり私の聞き間違いじゃなかったんだ。
操様は寿永隊長が生きていると信じ、彼が生きていることを前提に話を終えた。
つまり、私の言葉に耳を傾けてくれたということだ。
絶対有り得ないと思っていたことが起こって、私は呆気を取られそうになる。
でも、それが真実だと思うと体から力が抜けた。
「ちょっと大丈夫ですか!?」
急にへたれこんだせいか、汀様は驚いたように私の体を支えてくる。
「大丈夫です。ただ、ちょっと安心して……」
「安心?」
「操様はちゃんと寿永隊長を愛してるんだなって……」
「当然でしょう。母はああ見えて親馬鹿ですからね」
汀様の苦笑いに、私の自然と頬が緩んだ。
この時、私は汀様に聞くことがあったことをすっかり忘れていた。
それに、汀様が私や周りの人に隠し事をしているなんて思っても見なかった。