紅の葬送曲
≪紅斗side≫




「──で、僕を紅緒から引き離して何の話があるの?」





僕は病室のテラスに寄りかかって空を見る異母兄に声をかける。





異母兄と言っても歳は親子ほど離れている。






それでも、あの最低で最悪な父親から作られた兄だ。




僕達と同じ苦労、それ以上の苦労をしているだろう。





声をかけたというのに、兄さんは空を見上げているだけだった。





「用がないなら僕は戻るよ。紅緒と寿永汀を二人にするのは……」





「紅斗、紅斗が大事かい?」





テラスを出ようとしたら、兄さんがそんなことを問うてきた。






振り向けば兄さんは空ではなく、僕をじっと見つめていた。





紅緒が大事かって?





そんなの──。





「大事に決まってる。紅緒は僕の片割れであり、大事な妹なんだ。命に変えても守りたい」





僕には紅緒より大事なものなんてない。





僕の命よりも紅緒が大事だ。






紅緒の為なら僕は死んだって構わない。





「そう……。僕にとっても紅緒は大事な妹だよ。それに、紅斗。君も僕にとって大事な弟だ」





兄さんは何処か悲しそうに笑うと、僕に近付いてきた。





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