紅の葬送曲
「紅斗……、君は死なせないよ」
何だ……、兄さんは僕の考えていることなんかお見通しか……。
「死なせないって?」
僕は兄さんが僕の真意を知っていると分かっていながらもシラを切る。
「君は安倍明晴の元に行くつもりだろう?止めた方がいい、殺される」
「別に良いよ。それに、殺されるならただでは死なない。奴らと復活した切碕を道連れに死んでやる」
切碕が復活する前にノートを壊す。
復活するのに子の血が必要ならノートを壊すのにも子の力が関係するかもしれない。
僕の考えがあっているから分からないけど、試す価値はある。
僕の命一つで日本が、紅緒が幸せになるなら安いものだ。
すると、兄さんは僕のこめかみに左右の拳を当てるとグリグリと押してきた。
「痛い痛い痛い!骨がこめかみに当たってるから!」
骨がこめかみに当たってる上に、兄さんは手加減なしにグリグリとしている。
痛みに強い僕でもさすがに絶叫したくなる痛さだ。
「命を大事にしろ、紅斗。簡単に死ぬなんて言わないで」
「何で兄さんにそんなこと──」
そこまで言って、僕は口を閉ざした。
何故なら、僕は兄さんに抱き締められていたから──。