紅の葬送曲



とある山奥にある別荘。




そこはとある名家の別荘の一つで、普段は近くに住む管理人に全てを任せている。





全てを任せているとはいえ、管理人はそこに住んでいる訳ではない。





だから、夜に別荘内に明かりがつくなど有り得ないことだ。





──が、今別荘には明かりがつき、人影があった。





「──そうか、あの人は彼女を認めたか」





人影である少年はパソコンに向き合いながらスマホで電話をしている。





電話の相手は彼の弟で、会話の内容は部下と母親のことだ。





少年はパソコンの前から立ち上がると、傍にあるソファーに寝転がった。





「彼女は弱いくせに意外と我が強い。そういう所はあの人に似てるのかもしれないな」





彼は何日も前に≪彼女≫の目の前で建物の倒壊に巻き込まれた。





誰もが死んだと思う状況で遺体が見つからないことから行方不明扱いとされ、生死は不明とされている。





しかし、彼は生きている。





爆発と倒壊に巻き込まれたにも関わらず、彼は怪我一つ負うことなく生きている。





それは彼を爆発の寸前に助けた人物がいたからだ。






その人物とは──。




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