紅の葬送曲
「……お前、これを盗んできたのか?」
「ああ。……これで奴は切碕の三人の子供達を意地でも捕らえて血を奪い、殺すだろうな」
「ふん……。そう簡単にあの三人は殺させない」
少年は立ち上がると窓を開け、小瓶を外に放り投げた。
投げれた小瓶は別荘の前を流れる川の中へと吸い込まれ、闇の中へと消えた。
「……それより、お前こそ大丈夫なのか?こんな裏切り行為をして、奴に殺されるぞ」
「殺されてもいいさ。俺は紅斗と紅緒を裏切った。安倍明晴達も裏切った。……裏切りの代償が死なんて軽すぎるくらいだ」
男は少年に背を向けると上着から煙草を取り出して火をつけると、両手をスラックスのポケットに突っ込んだ。
そして、紫煙を吐き出すと彼の方を見る。
「俺は自分の命を捨ててまでアンタにかけてる。アイツらを……紅斗と紅緒を救えるのはアンタだけだからな」
「……簡単に言ってくれるな、本当に」
呆れたような顔をする彼に、男は子供のような笑みを浮かべ、ヒラヒラと手を振ると部屋から出て行った。
「期待してるぜ、寿永凌さんよ……」
そう言い残して──。