紅の葬送曲


翌日。




「退屈ー!早く退院したいー!」





私は大して入院していないにも関わらず、既に退院したくて仕方なかった。





今は大人しくしている安倍明晴達だけど、いつ動き出すか分からない。





体を動かしておきたかった。





ごねるように手足をばたつかせると、たまたまお見舞いに来ていた広瀬さんに頭を小突かれた。






「馬鹿言ってんな、大怪我人が。てか、こんだけの怪我して骨に異常無しとかすげぇ骨密度だな」






「毎日牛乳飲んでますから」





「牛乳か……。うちの息子にも飲ませるか」





広瀬さんは一人で納得したようにポンと手を叩いた。





彼には知栄さんとの間に栄翔(エイト)君という息子さんがいて、それはそれはやんちゃな小学生でよく骨折をしては知栄さんが学校に行っている。






その骨折の回数は学校から『こんなに学校の保険を使う児童は初めてだ』と言われるほどだ。





「その話はさておき、広瀬さん。寿永隊長のことについて何か分かりましたか?」





広瀬さんは諜報課として寿永隊長の行方を探してくれている。





でも、何の手がかりもなかったのか、彼は肩を竦める。





「蓬條や藤邦、政府のデータにアクセスして手がかりを探してるけど全然手がかりなし」






「……それって不正アクセスじゃありませんよね?」





私の言葉に、彼はギクリと肩を揺らす。





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