紅の葬送曲
広瀬さんは藤邦さん直伝のハッキングを得意としている。
それは世界トップクラスのセキュリティを誇る三名家のセキュリティを突破するほどのものだ。
でも、ハッキングは犯罪だ。
警察内にありながらも警察ではない翔鷹だけど、法に携わる者には変わらない。
それなのに、ハッキングをしてるなんて──。
「た、確かにハッキングしたけど、翔鷹の諜報課は特別に黙認されてるんだよ!それに、ハッキングでアクセスしたのは自動的に三名家や政府に伝わってるし」
年下にジト目で見られて、広瀬さんはたじたじだ。
伝わってるならハッキングしなければいいのに……。
「まあ、良いです。それにしても、寿永隊長は何処に行ったんでしょうね……」
私はため息を吐くと、窓の外を見た。
外は梅雨が近いのかどんよりとした雲に覆われている。
「……一雨来そうだな」
どんよりとした雲を見て、広瀬さんはポツリと呟いた。
──と同時に、病室のドアがノックもなしに勢いよく開いた。
「此処は浅井紅緒さんの病室で間違いありませんか!?」
開いたドアの所には血相をかいた女の人が立っていた。