紅の葬送曲
──ポタッ……ピチョン。
上から下に落ちては弾ける。
幾度となく、それは繰り返される。
──ポタッ……ピチョン。
「……それで君は僕に何の用?」
やけに静かで水音しかしなかった空間からふいに年若い青年の声がした。
彼のは持っている本に視線を落としながら、誰もいないはずの空間へと声をかける。
「我々はずっと貴方様を探しておりました。あの方の子供である貴方様を……」
すると、誰もいないはずの空間からけものの耳をした男がスッと現れた。
「ふーん……」
彼は突然現れた男に驚くことなく、興味無さそうに手元の本をめくった。
本と言っても物語を記した物ではなく、ページ毎に内容の違う日記のような物だ。
だが、それが不気味な物だった。