紅の葬送曲
拳銃を握る手が自然と震えた。
紅斗達を助けるなんて大見得張って飛び出してきたけど、実際に突入するとなると怖い。
これを撃てば人は怪我をする。
下手すれば死んでしまう。
人を殺すのを躊躇っては仲間や自分が傷付き、殺されてしまう。
それは紅斗が仲間になる前に安倍明晴達と襲ってきた時に深く実感した。
守られるだけじゃ駄目なんだって、戦わないといけないんだって。
ふと、背中を誰かに思い切り叩かれた。
「……っ!?」
全身に青アザがある私は叩かれたことによって、全身がビリビリと痛んだ。
声にならない悲鳴と共に背中を押さえてしゃがみこむと、楽しそうな笑い声がした。
「どうだ、痛かっただろ?」
涙目で睨み付けた先には羽取さんがいて、私を叩いたことを佐滝さんに咎められていた。
「才暉、今のは絶対痛いって。酷い奴だね、君は」
「ふん。でも、痛いって言うのは生きてる証拠だ。死んだら何も感じねぇんだし」
佐滝さんの言葉を一蹴した彼はしゃがみこむ私に視線を合わせるようにしゃがんだ。
「人の命を奪うのは怖い。俺も未だに怖い。でも、それ以上に怖いのは自分と仲間を守れないことだと俺は思ってる」
羽取さんは少し悲しそうな顔をすると立ち上がって、手を差し出してきた。
「初の実戦がこんなんで最悪かもしれねぇけど、大丈夫だ。凌が認めたお前ならちゃんとこなせる」
寿永隊長……。
羽取さんの言葉を聞いて、彼の手を借りずに自らの足で立ち上がった。
その頃には手の震えは無くなっていた。