紅の葬送曲
「紅緒は紅斗を、江と侑吏は摂紀を!」
羽取さんと佐滝さんは私の横を風のようにすり抜けると、安倍明晴へ攻撃を仕掛ける。
私は羽取さん達が安倍明晴へ襲いかかっている合間を見て、紅斗に駆け寄った。
「紅斗、しっかりして!」
抱き起こした紅斗は全身傷だらけでぐったりとしている。
数ある傷の中でも左目の傷が一番酷いようで、固く閉じられた目からは鮮血が溢れている。
安倍明晴が持っていた≪何か≫──、それは紅斗の赤目の眼球だった。
恐らく、さっき聞こえた悲鳴は眼球を抉り取られた痛みからのものだろう。
眼球を抉り取られる痛みなんて想像出来ない。
でも、紅斗のあんな悲鳴を聞いたのは初めてだ。
「紅……緒……」
自然と溢れてきた涙が頬を伝うと、紅斗がうっすらと目を開けて右目で私を見ていた。
「紅斗!?」
「紅、緒……何で……来た……の?」
「二人を助けに来たんだよ!」
「馬鹿……。何の、た……めに……僕らが命を……張った、のさ……」
紅斗は眉間に深くシワを寄せると手を左目に当てて、歯を食い縛りながら体を起こした。
左目からの血が止まっていないせいか、紅斗は着ている白いシャツは頬から伝い落ちた血で赤く染まっていく。
私は紅斗の体を支えると、摂紀お兄ちゃんの方を見た。