紅の葬送曲
目の前に落ちたのは一枚の写真。
その写真には殺されたときの京が映っていた。
京が倒れる血溜まりに影が映っていて、それは目の前にいる狐の耳をした男だった。
「……お前が京を殺した?」
自分でも驚くくらい声が低かった。
寿永隊長がいた頃に京を殺したのは目の前に倒れる琉ちゃんだと判明し、本人も犯行を認めていた。
でも、目の前の写真を見る限り琉ちゃんの証言は偽りだったようだ。
「彼女を……殺したのは俺だ……」
すると、倒れていた琉ちゃんは夥しい血を流しながらもゆっくり体を起こした。
「琉ちゃん!でも、この写真には──」
「俺は……俺に化けたアイツに……彼女が殺されると知っていた……。それでも、助けなかった……見殺しにしたんだ……」
確かに京が残したSDカードには琉ちゃんのことを調べたデータが記されていた。
でも、小鳥遊さんが残したデータには琉ちゃんは味方だと記されていた。
異なるデータにどちらが本当なのかは分からない。
頭が混乱していたけど、安倍明晴の言葉で更に混乱することになる。
「司馬琉介は二重スパイだったのですよ。我々の味方でいながらもあなた方の味方でもあった、それだけです」
二重スパイ……?
安倍明晴達の味方であり、私達の味方。
意味が分からない。
何でそんなことをする意味があるのだろうか?
キャパオーバーになりつつある頭を抱えると、琉ちゃんが私の手に触れてきた。
優しく私の手に触れる琉ちゃんの手は小さい頃に握ってくれたモノと同じだった。