紅の葬送曲
引き離しても無駄だった。
私の体には琉ちゃんの血が飛んでいる。
私の鼻には琉ちゃんの血の匂いがこびりついている。
──人の死が私に染み付いている。
「あ……あぁ……死が……血が……」
体にこびりついた血に手を震わせながら譫言のように呟く。
死が近くにある。
血の匂いがこびりついている。
死の匂いが……血の匂いが──。
「紅緒……気をしっかり持て……。飲み込まれるな……」
すると、紅斗が上半身だけを起こして私の額に自分のそれを押し当てた。
血の生暖かさとは違った温もり。
それは生きている人が持つ優しい温もりだった。
「紅斗……」
紅斗の温もりを感じていると自然と気持ちが落ち着いていく。
「落ち着いた……?」
紅斗の問いに頷くと、紅斗は安心したように笑った。