紅の葬送曲
「おやおや、残念ですね。もう少しで紅緒が堕ちるところだったのに……」
安倍明晴は心底残念そうにため息を吐くと、持っていた紅斗の眼球を手のひらで転がした。
堕ちる……?
一体、何に堕ちるというのだろうか?
「まあ、構いません。さてと、そろそろ切碕様の復活の時間ですね」
安倍明晴は着物の袂から黒いノートを取り出すと、床へと置いた。
「翔鷹にある黒いノートのコピーに纏わる話は嘘だと判明しました。……楊蘭、アンジェロ、来なさい」
二人は安倍明晴に呼ばれるがまま奴に近付く。
その瞬間、二人の体は切り裂かれ、その場に倒れた。
安倍明晴は倒れた二人に近付くなり切り裂いた体に手を入れ、中から一部の臓器を取り出した。
──子宮だ。
「あの方は殺した女の子宮を必ずと言って良いほど握り潰していた。……理由は知りませんがね」
そう言って、奴は黒いノートの上で2つの子宮を握り潰した。
ただの肉片と化したそれは黒いノートの上に嫌な音を立てながら落ち、黒いノートを赤黒く染めていく。
と思っていたら、黒いノートから白い手がぬっと出てきた。
奥から這い出るようにゆっくりと手が出て来て、這い上がるように足がノートから出てくる。