紅の葬送曲
そんな私に彼は困ったように笑うと、そっと指先で涙を拭ってくれる。
「……心配かけたな。お前が生きていて良かった」
「本当に……心配したんですから……馬鹿隊長……」
ようやく出てきた言葉は嫌味が込められてしまった。
「分かってる。あと、汀を守ってくれてありがとうな」
彼は私の頬に貼られた絆創膏を撫でる。
あ、そうだ。
あの時のことで汀様に聞けなかったことがあったんだ。
本人が目の前にいるなら本人に聞こう。
「あの、寿永隊長。私と汀様を助けてくれたのって──」
「おや、そこにいるのは僕の可愛い我が子達かな?」
ふと、聞こえた声に緊張が走る。
今まで聞こえなかった冷たい声。
寿永隊長はバッと振り返ると、持っていた長刀を構えた。
「そこの君は……寿永周君に良く似ているね」
その声の主は双眸を赤く染めた、紅斗と良く似た容姿をした男。
「切碕ヒカリ……」
写真でだけ見たことのある実父──切碕ヒカリはその美しすぎる顔に淡い笑みを浮かべていた。