紅の葬送曲
「摂紀、20年ぶりかな?年を取った君は紀生(キオ)に似てきたね」
「母さんの名前を言うな、クズが。一緒に扱われるだけで虫酸が走る」
摂紀お兄ちゃんは怒りのような、憎しみのような眼差しを切碕に向けている。
そんな眼差しを向けられても切碕は平然としていて、摂紀お兄ちゃんを見ていた眼差しを私と紅斗に向けてきた。
「君達の名前は?双子……だよね?」
「教えるものか……」
紅斗は痛む体を庇いながら立ち上がると、私の前に立った。
「……父親に対する口の聞き方がなっていないね」
紅斗に良く似た赤い瞳を細めると紅斗の頭を鷲掴みにして、軽々と持ち上げた。
紅斗は頭を掴む手から逃れようとするが、その手は緩まるどころか更に力が込められる。
「ぐ……ぁあ……」
呻く紅斗の頭が軋む音が聞こえた。
脳裏に安倍明晴の最期の光景がフラッシュバックする。
このままだと紅斗までもがあんな風になってしまう……。
「紅斗と紅緒!」
そう思った私は切碕に向かってそう叫んだ。
赤い双眸が私に向けられる。