紅の葬送曲
「貴方は貴方自身とその仲間を永久的に葬るために蘇ったのね?」
「……当たりだよ」
藤邦さんの言葉に、切碕は頷いて壁に頭をつけると出血の止まらない腕をぎゅっと握った。
「明晴は僕が死ねば、必ず生き返らそうとする。彼が僕に心酔していたのは知っていたし、僕自身も生き返ってまた殺戮を繰り返そうとしてた。でも……」
「でも?」
「でも……、最期に見た君の顔が忘れられなかったんだよ、アリスちゃん」
切碕は目を瞑って息を吐くと、再び目を開いて口を開いた。
「天河君が僕と一緒に落ちたとき、君の顔が見えた。『また好きな人を失ってしまう……嫌だ!』そんな顔で、君は彼の名前を呼んだ」
天河って小鳥遊君の叔父さんのことだ。
でも、そんな藤邦さんの願いは虚しく、天河さんは命を落とした。
藤邦さんをちらりと見ると、彼女はその時のことを思い出したのか悔しそうに拳を握り締め、唇を噛んでいた。
「アリスちゃんの顔を見て思ったよ。やっぱり憎しみを向けられるより愛しさを向けられたかったって……。でも、僕がいる限り君は憎しみを僕に向ける」
「それは貴方が私の大切な人を奪ったからよ。和真も天河と朱鷺も……貴方が殺した……」
藤邦さんは感情が消えた顔で銃口を再び切碕に向けた。
大切な人を奪われるのは自分が死ぬよりも辛いがする。
胸が苦しくて、体が引き裂かれそうになる。
そんな想いを彼女は何度も抱えては乗り越えて今に至っている。
その想いを憎しみに変え、その憎しみを切碕に向けることによって。