紅の葬送曲
心の中で嘆きながら、私は疑問に思っていることを口にした。
「呪いは……本当に解けたんですか?」
恐る恐る聞く私に、彼は呆れたようにため息を吐いた。
「そんなことか……。ああ、解けたみたいだな。何処も痛くないし、息苦しくもない」
本当に……寿永隊長の呪いは解けたんだ……。
安堵に涙が出そうになるけど、どうにか堪えた。
「兄さん!」
すると、私達の傍に黒塗りの車が止まり、中から汀様が降りてきた。
「汀……。それに……」
寿永隊長は汀様の姿に笑みを溢すが、後ろに立つ女性──操様の姿に複雑そうな顔をする。
死んだと、行方不明だと知らされていた息子が目の前にいる。
彼女は彼に何というだろうか?
操様が寿永隊長に何と言うか不安になりながら様子を見ていると、彼女の次の行動にその不安は払拭された。
──彼女は目の前の息子を、寿永隊長をその腕で抱き締めていた。
突然のことに寿永隊長は珍しく戸惑っているように思える。
それも当然だ。
何せ、彼は母親から家のために死ねと言われて続けたのだから……。