紅の葬送曲


「あ、一つ言い忘れた。待て、浅井紅緒」




すると、寿永隊長が思い出したように、私を呼んだ。




何故にフルネーム!?




そう突っ込みたかったけど、突っ込める訳もない。





私を見る彼の目が殺気を帯びていたから。





「──いや、何でもない。行け」




でも、その殺気を帯びていた目はすぐに背けられた。





私は小鳥遊さんにもう一度促されて、部屋を出た。





その部屋を出た直後──。





「俺は忘れたことがないのに……。何故、お前は……」





苦しそうな彼の呟きが聞こえた気がした。






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