紅の葬送曲
「あの、小鳥遊さ──」
でも、聞かずにはいられず聞こうとしたら、彼女の指が唇を押さえた。
「あの方が言わないのなら私の口からも言えません」
彼女は寿永隊長を敬愛している。
彼が話さないと判断したなら彼女の中でもそうなのだろう。
「ただ……」
「?」
「あの方は──凌は苦しんでる……。昔も今もこれからも……全てが終わるまで彼は解放されない……」
彼女は意味深なことを呟くと、歩き出した。
後ろから微かに見えた彼女の横顔には一滴の涙が伝っていた。
私は訳が分からないまま、小鳥遊さんの背中を追いかけた。