紅の葬送曲
表紙とページは真っ黒で記されているイラストや文字は赤く、記されている内容はあまりにも残虐な殺人方法だった。
それなのにも関わらず、彼は平然とそれを見ている。
まるで、その本に魅入られているように。
「ねぇ、一つ聞いて良い?」
ふと、彼が本に視線を落としたまま男に声をかけた。
「何でしょうか?」
「これを書いたのは君の言うあの方?」
「はい。あの方……切碕様の書いたものです。そして、貴方様はあの方の遺された我々の希望です」
まるで神を崇拝するかのように頭を下げた男に、彼はようやく男の方を見た。
薄暗い空間に赤い双眸が映え、その容姿は男の言う≪あの方≫にそっくりだった。
「……今回は同じやり方しか出来なかったけど、次はこの通りにやってみようかな」
彼は黒い本を閉じると赤い双眸を細めて、辺りを見渡した。
──ポタッ……ピチョン。
見渡した先には力なく倒れる複数人の骸が転がり、水音はその骸の指から伝い落ちる血の音だった──。