紅の葬送曲
──ゲホ、ゴホッ……。
月明かりが射し込む広い室内に、込み上げてくる咳に体を揺らす青年の影が一つ。
何度も何度も込み上げてくる咳に、彼は口を押さえて苦しそうに息を繰り返す。
──ゴホッ……ゴホ……ッ。
押さえていた手に、赤黒い液体が吐き出される。
──血だ。
口から血を吐き出したというのに、彼は落ち着いていた。
それは彼にとって珍しいことでは無いからだ。
「……俺はあとどれくらい生きられるんだ……?」
彼は誰に問い掛ける訳でもなく、小さく呟いた。
そう、彼はもう永くは生きられない。
それが彼が持って生まれてきた運命だった。