紅の葬送曲
「ククク……、そう殺気立たないでよ。君が殺したい程憎んでいるのは僕じゃなくて、僕の父さんだろ?」
寿永隊長が切碕を殺したいくらい恨んでる?
それはどういう意味だろうか?
「ああ、そうだな。だが、殺したい奴はもう死んでる。そうなれば、憎しみの矛先はそいつに似たお前に行く」
寿永隊長は拳銃を握る手に力を込めた。
この人は紅斗という彼を殺すつもりだ。
でも、何でだろう?
紅斗という彼が殺されてしまうことを私の中の何かがは拒んでいる。
初対面で容疑者のはずなのに、私は彼を──。
「……何のつもりだ、お前」
はっと我に返ると、私の目の前には苛立ちを露にした寿永隊長がいる。
その彼の持つ拳銃の銃口は私に向けられている。
「え……、何で……私……」
私は何故か寿永隊長の向ける銃口から紅斗を守るように立っていた。