紅の葬送曲
憎しみの目を向けられた紅斗は口角を持ち上げると、身を翻した。
そして、首だけをこちらに向ける。
「凌君、君は何も見えていない。見えていないから見つけられないんだ」
「俺が何も見えていない……だと?」
「その意味が分かったとき、君がどうするか見物だね」
ふと、寿永隊長を見ていた紅斗の目が私を捉える。
「……ッ!?」
赤い両目と目が合っただけなのに、ゾクリと鳥肌が立った。
紅斗は顔を前に向けると、その場から去って行った。
何なの、今の目は……。
何で彼は私をあんな目で見たの?
鳥肌が立ったときの紅斗の目には何故か慈しみが込められたような優しさがあった。
それは決して敵対する相手に向けるような眼差しではない。