紅の葬送曲
「あの、小鳥遊君」
「ん?」
「小鳥遊君は寿永隊長のこと、全部知ってるの?」
私の問いに、小鳥遊君は口を閉ざした。
でも、小さく息を吐いたかと思うと顔を覆っていた手を退かして、私の方を見た。
「……知ってるよ、小さい頃から一緒だからね」
「じゃあ──」
「でも、俺の口から言えない。他人が話して良いほど軽い話じゃないんだ、これは」
小鳥遊君は膝の上に置いた拳を手のひらが切れるんじゃないかと思うほど強く握り締めた。
もう小鳥遊君には聞けない。
彼が口が硬いこともあるけど、手のひらが切れるくらい強く握り締めた拳がこれ以上教えてくれないことを物語っていた。
「……知りたいなら本人に聞くと良いですよ、浅井さん」
ふと、小鳥遊さんの声がした。