また君に恋をする
お願い。
ただの喧嘩で済んで。
私は冷や汗と不安を抱きながら、必死に走った。
人が多くて、やけに長い1階の廊下をくぐり抜ける。
辿りついた男子トイレの周りには人だかりが出来ていた。
面白がって噂している人や、キャアキャア騒いでいる人もいる。
群がる人を抜けて、トイレのドアに手をかけた時、向こう側からドアを開けた人がいた。
「…奏多くん?」
「桃さん?!」
「何してんの?」
「…何でもねーよ。」
少し動揺がみえたその態度と、何もないと言った時に後ろに動いた右手。
その手には、何枚かの写真が握ってあった。
「何それ?」
「何でもない。」
「見せて。」
「見なくていい。」
隣にいる春翔と2人揃って、一瞬だけ見せた表情。
…何かあるんだ。
「喧嘩したの?」
喧嘩なんてしてほしくない。