また君に恋をする
夢で何度も見た辿り着けない正体。
見えなくても、わからなくても、私の大事な人なんだと思っていた。
たくさんすれ違って、たくさん傷つけた。
決して近道はなかった。
あの時になった言い合いも、された強引なキスも、今は思い出に出来る。
辛い時にいつも私を助けてくれて、優しい声で名前を呼んでくれる。
正直、もう遅いかもしれない。
だけど、私は奏多が好きだ。
思い出してからも。
…ううん、思い出さなくても彼に惹かれていた。
キャラメル色の髪も、笑うと細くなる目も、守ってくれる背中も、大きな手も。
優しい声も、大好きな甘い香りも、全部に惹かれていた。
全てをハッキリ思い出した私は、溢れる涙を拭って奏多に会いに行く準備をした。
引き出しにしまっていた海遊館のチケット。
本祭が終わったら行こうって、約束していたのに。
それをカバンに入れて、首に大切なネックレスをつける。