また君に恋をする


「こんにちは。奏多…、いますか?」


「え?」


「全部…、思い出しました。」




そう言うと、目を見開く香月さん。


おばあちゃんも春翔も、同じ表情をしていた。


それを見るたびに、私は周りに恵まれていると実感する。




「香月さん…、」


「あ、ごめんっ…。」




目に涙を溜めている香月さん。


それを見て泣きそうになる私。


私は他人なのに、涙を流してくれる香月さんの優しさは、姉弟そっくりだ。




「おいで。奏多なら寝てるから。」




涙を拭った香月さんは、家の扉をガチャっと開けた。


それに続いて中へ入る。


久しぶりにお邪魔するこの家に、私は本当に奏多の彼女だったんだと、実感した。




「わかるよね?」


「はいっ…!」




ニコッと笑う香月さんに、私も笑い返して2階の1番奥にある奏多の部屋へ向かった。

< 230 / 289 >

この作品をシェア

pagetop