また君に恋をする


「えぇ…?桃、何言ってんの?」




少し不安そうに笑う芽衣は、再び私に近づいた。


床に膝をつけて私に目線を合わす。




「桃、奏多だよ?」


「だから誰?知らないよ。」




わからない。


思い出せない。



私の返事を聞いてまた目に涙を溜める芽衣。


どうして泣くの?


私、何かひどいこと言った?




「芽衣、何で泣くの?」


「ううん、何にもない。先生呼んでくるから待ってて。」




私の手をギュッと握って、無理矢理笑った芽衣はそのまま病室を出て行った。



私、おかしくなっちゃったのかな…。


どれくらい寝てたんだろう。



ここで寝ている理由を思い出す。


必死に記憶を辿るけど、決まった場所からまったく思い出せない。


思い出せるのは、薄暗い部屋で殴られたことだけ。

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