まる さんかく しかく
さんかく
clover
なんてバランスが悪いのだろう、と思う。
三つ葉のクローバーのようなお洒落なデザインの、寝室の電気。その三つの電灯のうち、ひとつだけが切れた。
「__よっと、」
私はベッドの上に立つと、買ったばかりの真新しい電球を箱の中から取り出す。
寿命はきっと同じなんだから、切れたのを換えるとき、まだ切れてない分も一緒に換えた方がいいんじゃない?って言ったのに。
彼はひとつしか買ってこなかった。
「うっ……ゴミが舞ってる」
電気の傘を外して、顔に落ちてきた綿ゴミを手で扇ぐ。
電気を消したいとき、この部屋はリモコンがないから苦労するんだ。女の子が暗闇にして欲しいときって、どうしても余裕がないときだからね。
だから付き合いたてのとき、キャラクターのフィギアがぶら下がった長めの紐を付けようとして、お前はセンスが悪いってすごく怒られたっけ。懐かしいなぁ。
「なに笑ってんの?」
「……なんでもない」
ドアを開けて部屋に入ってきた彼を横目で見て、私は空箱を小脇に抱える。
「持つよ」
ベッドサイドに立った彼は、おもむろに、私に手を差し延べた。
っていうかさ。
背だって高いし自分の家なんだし、自分で替えればいいのに。なんで私が、と釈然としないながらも、とりあえず電気の傘と、空箱を手渡した。
「はい。」
時が経つにつれ、馴れ合ってゆく関係。
愛しさは薄れないけど、日常が当たり前で染まっていく。
「それじゃねぇよ。こっち」
渡したものをベッドの上に放り投げると、彼は私の腰を両手で掴んだ。
がっしりと。
「ち、ちょっと、くすぐったいし! やめてよ、掴まれてた方がバランス悪くして転ぶって!」
「大丈夫。転んでも痛くねーから」
彼は笑いを帯びた声で言うと、更にふざけて腰を抱き締め、私の背中に顔を埋めた。
私はもがきながら、電球に手を伸ばす。
「ねえ、ちょっと、邪魔しないでよ? しかもちゃんと三つ換えようって言ったのに」
「お前、暗い方が好きだろ?」
当たり前のように言うから、恥ずかしいよりまず先に、驚いて手が止まった。
「な、何言ってんの……」
「バランス悪いのは大目に見ろよ。センス悪いよりはいいだろ?」
……覚えてたんだ。付き合いたての頃の話。
やっぱり堪えられなくて、私は体の向きを変えて彼に抱きつくと、ぷっと吹き出した。
fin