昨日の夢の続きを話そう
先生の声が、すぐ近くにいるはずなのに遠くで、エコーがかって膨張している。


「モエコだかモモコだかいうほら、男子学生たちから人気の若い女がいるだろ」


〝子ども〟?


「最初は一回きりの遊びのつもりだった」


先生はチッと、舌打ちをした。
胸が、ざわざわと騒ぎ出す。


「本気じゃなかったんだ」


目の前が真っ暗になった。

という比喩が、読みかけの文庫本にあったけど、どうやら本当にそういう現象があるらしい。

世界全体が、黒いセロファンかなんかで覆われたみたい。
心臓は、鋭利ななにかでザクザク刺されたように。苦しい。


「もう事務局長や理事長にまで話がいってて……だから、」


私とは、もう会えない、と。

僅かばかり苦しげな声で、先生は囁いた。
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