昨日の夢の続きを話そう
食欲がないし、正直面倒なのでプレハブの外でひとりきりになりたい気分だった。
気を悪くせず断るには、どう言ったらいいのだろう……?
と、頑張って鈍い頭を働かせて考えている私に、前田さんが一歩間合いを詰める。


「それに香澄ちゃん、今日は朝からなんだか元気がないからさ、美味しいものでも食べて休んでおいでよ」


目を細め、心ばかり微笑んだ前田さんは、私の手の甲をそっと握った。


自転車のサドルにまたがって、ペダルを漕いで、ハンドルを持つ手を不意に見下ろす。
さすってくれた手の甲を見る。
イケメンがどうのこうのってことなんかより、前田さんのご厚意を無駄にするのが罰当たりな気がした。

環状道路を真っ直ぐ進んで、花時計カフェに着いて。
きっと大好きなメニューの美味しそうな匂いを嗅いだら俄然食欲が湧いてくるだろう、と期待してたのに、全然だった。

注文したサンドイッチを、じいっと見つめる。

ああ、後悔。
念力で消えたらいいのに。
……て、バカバカしい。


『最初は一回きりの遊びのつもりだった』


昨日の夜、先生がのしかかって来たときからずっと、あの重み、感触が、私の世界を暗くしている。
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