昨日の夢の続きを話そう
目の奥からじわっとこみ上げて来る。我慢したら、肩が小刻みに震えた。


『それに香澄ちゃん、今日は朝からなんだか元気がないからさ、美味しいものでも食べて休んでおいでよ』


前田さんの優しさを、迷惑だと思ってしまった自分が情けなくてもう消えたい。
最低すぎて泣きたい。

いなくなりたい。

そしたら誰もかなしまない。どうせ私はひとりだし。

仕事も安定してないし、彼氏もいない。
友達はみんな家庭を持ってるし、大好きなおばあちゃんも、もう……。


「__コーヒーのお代わり、いかがですか?」


斜め後ろで声がして。
緩慢ながらもハッとした私は意識して深く呼吸をして、ちらりと目だけをそちらに向ける。

そしたら相手は、あ。という顔をした。
なぜならランチセットのコーヒーは、運んできてもらったときのままで、なみなみと注がれ、水位を減らしていなかったから。

私も同じように、あ。と口を開けたまま、すごく場違いで申し訳ない気持ちがどんどん溢れてきて、とてもいたたまれなくなった。


「昨日の……。ご来店くださって、ありがとうございます」


イケメン店員さんは、私とサンドイッチを見比べて、柔らかく微笑んだ。


「い、いえいえ。昨日はクーポン券をいただいて、ありがとうございました」


屈んだ私は前髪を直すふりをして、目元を隠す。無理して口角を上げる。


「それなのにごめんなさい。サンドイッチを頼んだのに、どうしても食べられなくて。本当にすみませんっ」


か細い声がゆらゆらして、気味悪がられたんじゃないかって不安になった。
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