昨日の夢の続きを話そう
「あ……ごめんなさい。ちょっと、失礼するね」
嫌な予感が存分にした。
だってこの家の扉を勝手に開けれる人は、ひとりしかいない。それも、この世でたったひとり、もう会いたくもないし、会うこともないと思ってた人。
台所に砂岡くんを残して玄関に行くと、その予感は当たっていた。
「香澄……久しぶり」
島中先生は弱ったように顔をしかめた。
笑おうとして、上手く笑えないといったような歪んだ表情だった。
「荷物、研究室に送ってくれてありがとう」
顔が強張る。口が動かない。
「着払いにしてくれても良かったんだよ」
額と頬の皺、低音の声、整髪料の香り。
どれも懐かしいけれど、もう、胸をときめかせる類のものではなかった。
たたきに立つ先生と私の間には、きっぱりとした隔たりのような壁があって、別世界で終始苦笑い気味の先生を、透明の壁越しにさめざめと冷静に見つめている自分がいる。
「そんなこと言うためにわざわざお越しくださったんですか?」
足音もなく、いつのまにか瞬間移動のように私の後ろに立っていた砂岡くんは、真面目な口調で言った。
先生が驚いて、パッと目を見開く。
そして私と砂岡くんとを、失礼なくらいじろじろと何度も往復で見た。
「香澄さん、帰ってもらったら?」
砂岡くんが、先ほどより一層硬質な声で言った。
不穏な空気が流れる。
嫌な予感が存分にした。
だってこの家の扉を勝手に開けれる人は、ひとりしかいない。それも、この世でたったひとり、もう会いたくもないし、会うこともないと思ってた人。
台所に砂岡くんを残して玄関に行くと、その予感は当たっていた。
「香澄……久しぶり」
島中先生は弱ったように顔をしかめた。
笑おうとして、上手く笑えないといったような歪んだ表情だった。
「荷物、研究室に送ってくれてありがとう」
顔が強張る。口が動かない。
「着払いにしてくれても良かったんだよ」
額と頬の皺、低音の声、整髪料の香り。
どれも懐かしいけれど、もう、胸をときめかせる類のものではなかった。
たたきに立つ先生と私の間には、きっぱりとした隔たりのような壁があって、別世界で終始苦笑い気味の先生を、透明の壁越しにさめざめと冷静に見つめている自分がいる。
「そんなこと言うためにわざわざお越しくださったんですか?」
足音もなく、いつのまにか瞬間移動のように私の後ろに立っていた砂岡くんは、真面目な口調で言った。
先生が驚いて、パッと目を見開く。
そして私と砂岡くんとを、失礼なくらいじろじろと何度も往復で見た。
「香澄さん、帰ってもらったら?」
砂岡くんが、先ほどより一層硬質な声で言った。
不穏な空気が流れる。