昨日の夢の続きを話そう
「私、やっぱそういうのはダメだなって思って、反省して。だからこれからはひとりでも生きていけるように、スープも作って、いつまでもめそめそしてないでちゃんと食べて、新しい仕事も早く見つけて」
「香澄さんには無理だよ。俺と同じのは作れない」


徐々に、視界が晴れてゆく。


「え? ど、どうして」


そしたら、砂岡くんの顔がすぐ近くに接近していることに気づいて、私は面食らった。


「あ、ごめん……香澄さんのことになると俺、ガキみたいだよな」
「……は?」
「さっきもあの男に悪態ついちゃうし、香澄さんには意地悪なこと言っちゃうし。カッコ悪ぃ」


浅い角度で俯いて、鼻先を指で擦った砂岡くんの片眉がぴくりと上がる。


「俺、香澄さんのことが好きなんだ」


一歩こちら側に踏み込んで来た砂岡くんは、躊躇いがちに、けれども濁りのない目で真っ直ぐに、私を見つめた。


「っ、」


嬉しいと、素直に思う。
傷心したばっかのくせに、都合がいいと思われるかもしれないけど。
私も砂岡くんのこと、すごくいいなって思う。でも。

満たされて、ぽかぽかに温かくなった心の雲行きが、怪しくなる。


「ごめんなさい……」


やっぱり、まだ怖い。

ご縁は大切にしようと心に決めたけど、さすがにこんなに好きになっちゃったらダメな気がする。
後から反動で襲ってくる喪失感が怖い。
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