昨日の夢の続きを話そう
「ありがとう。そうだったらいいんだけど。オープンしたら香澄さんもぜひ食べに来てね」
「うん、ぜひ! そのレストラン、遠いの?」
「車で三、四十分くらいかな。環状道路を真っ直ぐ行って、海沿いの方に折れたとこにあるんだけど」
「そっか! じゃあバスで行けるね。海岸線通るバス、けっこうたくさんあるし」


楽しみだなぁ、と思って、カップの中で香り立つコーヒーに、ふっと微笑みながら息をかけた。


「香澄さん、頬が緩んでるね」


両手でカップを持ったまま、私はちょっと赤面する。


「だって……。砂岡くんが作るレストランのメニューってどんなのかなぁって、想像したら、つい……」
「そか。俺は今、別のこと考えてるけど」
「、へ?」


別のこと?


「香澄さん。誤解がとけたのなら、さっきの話しの続きがしたいな」


体をこちらに向けた砂岡くんが、甘い声で私の耳元に囁いた。
私はもう肩を張り上がらせるほど驚いて、とっさに手からカップが滑り落ちそうになった。

それをなんとか免れ、照れ隠しに慌ててコーヒーをごくりと飲むと、「熱っつ!」どうやら飲み込むタイミングを誤ったようで。

苦しむ私に、「香澄さん、大丈夫? 火傷?」砂岡くんが真顔で言った。


「う……」


こくりと頷くと、砂岡くんがふっとゆるやかに微笑む。
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