昨日の夢の続きを話そう
私はもう恥ずかしくて、赤面どころじゃなかった。
顔から火が出るくらい熱い。穴があったら入りたい、とはこのことだ。もしここが現場なら、穴に潜り込んで一生出てこれないかもしれない……。


「これ……?」
「……腹巻、です」


去年、おばあちゃんが作ってくれた腹巻。
まったくもってこんな状況になるなんて予想だにしていなかったので油断して、こないだから愛用しているのだ。

砂岡くんが胸に顔を埋めるようにして動かなくなったので、私は恐る恐る薄目を開けた。
すると彼は引くどころか、体をひくひくさせて笑いを堪えているではないか。

やっぱり、引く……よね?


「あ、あの……砂岡く」
「ははっ! なんだろう? なんかすごくもどかしいくらい俺、香澄さんのことがいとおしいんだよね」


目一杯、きらきらの澄んだ瞳を細めて笑うから、恥ずかしがってるこっちまで色気のない自分が可笑しくなって、ふたりで笑った。

笑ってからまた、抱き合った。
外で作業してたからか、砂岡くんからは風の匂いと、木と土の匂いがした。

柔らかい髪の毛に触れること、色っぽい眼差しで見下ろされること。
堪えるような息遣い、繊細に動く指先。
どれをとっても新鮮で、これからどんどん、ますます砂岡くんにハマってしまいそう。

体のあらゆる部分が触れ合うたびに、まぶたの奥がちかちかして、星雲みたいにぐるぐるして、プラネタリウムにいるみたいだった。

宇宙のしくみや歴史については、よくわからないことが多いけど、私は砂岡くんに抱かれながら思った。

何千年も前からきっとこんな風に、大切な誰かと思いを通じ合わせ、温かい料理を一緒に食べ、寒い夜は肌を重ねたりして。
最初はなにもなかったただっぴろい土地に、ちょっとずつ協力して、木や藁や土で試行錯誤して、自分たちだけのかけがえのない城を作り上げていったのだろうな、と。

そうして自分たちなりの、幸せのかたちを見つけてゆくのだ。
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