昨日の夢の続きを話そう



運転中の史(ふみ)くんと、助手席に座る私との間にある小物入れのなかで、キャンディーを包んだセロファンが太陽光に照らされてきらきら光っていた。
苗字が気に入らないというので、私はこないだから彼を名前で呼んでいる。

風は冷たいけど、お天気に恵まれたドライブ日和の今日。
私たちは史くんのおじいさんのレストランに向かっている。

途中、もう終わってプレハブ小屋も解体した現場を通りかかったとき、史くんが白状した。こんな風に。


「ほんとはね、花時計カフェに来る前から、俺、香澄さんのこと知ってたんだよ」
「え、そうだったの?」
「うん。リフォームの様子を見にレストランに行く途中とか、よく現場の前を通りかかってさ。ひょろひょろしながら重たそうな機材運んでる姿が危なっかしいなって、気になってたんだ」
「うわぁー、恥ずかしい」


私は膝に広げていた旅行雑誌で顔を隠した。


「勢いあまってクーポンあげたあと、下心あるのバレて警戒されたかなぁってちょっと後悔してたから、次の日来てくれたときはすげー嬉しかった」


横目でこちらを見た史くんは、にっと口角を上げた。

レストランのオープン前に、急遽京都に行くことになった。旅行雑誌は行きたいところに貼り付けた付箋まみれになっている。


「車内で読んで、酔わない?」
「あ、読んでたわけじゃないの。ちょっと、確認してただけ」
「そっか。そろそろ着くよ」
「はい」


抹茶スイーツのページには普通の付箋じゃなく、特別に栞を挟んでいる。
史くんにもらったナスタチウムを、プラスチックのシートに挟んで加工したもの。

史くんと湯豆腐をほくほくしながら食べるのもなかなかいいなぁ、幸せそうだなと思いながら、私は雑誌を閉じた。
すごくすごく楽しみ。
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