昨日の夢の続きを話そう
「だったらいっそのこと、永久就職しちゃえば⁉︎」


表情をパッと明るくさせ、前田さんが言ったとき。


「__失礼いたします」


突然背後から穏やかな声が届いて、私たちは同時に肩をビクッと上下させた。


「食後のコーヒーをお持ちしてもよろしいですか?」
「お、お願いします……」


小刻みに頷くと、さっきのイケメン店員さんは目を細めて柔らかく微笑んだ。


「環状道路脇の発掘現場の方ですか?」


まあ、私たちの服装を見れば、薄々想像つくのかもしれない。
前田さんは上下作業服で、私は着古したヨレヨレのカットソーとジャージみたいな楽なズボン、土汚れが染みた腕サック、つばの広い日よけの帽子。


「はい、そうです」


緊張で固まっている前田さんに代わって、恥ずかしいなと思いながら私が答えると、店員さんはタブリエのポケットからなにやら紙を取り出した。


「もし良かったらこれ、ランチに使ってください。クーポン券です」
「え? あ、ありがとうございます……」


ちゃっかり先に手を伸ばした前田さんは、緊張したような外行きの声で言って受け取った。

ランチ二十%割引きのお得なクーポン券は、十枚くらい綴られている。
現場のみんなにこぞって来店し欲しいのか、労ってくれてるのかよくわからないが、花時計ファンとしてはありがたい。

店員さんが去ったのを見計らって、前田さんが小さくガッツポーズした。
年上なんだけど、その仕草がとってもキュートだなって思った。
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