昨日の夢の続きを話そう
「……その、ウエルカムボードって、元々麻衣子の弟さんに頼んでいたんだよね? 美大に通ってる」


膝の上で硬く拳を握っていた私は、姿勢をただし、場の空気を切り替えるような明るい声で言った。

麻衣子がこくりと頷く。


「私みたいな素人じゃ、弟さんの代わりになれないんじゃないかな」
「ううん! そんなことない!」


テーブルに両手を付いて身を乗り出した麻衣子は、真剣な声で言った。
振動で、お互いのコーヒーカップの中身がちゃぷんと波打った。


「澪の手先の器用さは折り紙つきだし、それに」


そこで言葉を止め、麻衣子は神妙な顔で私を見つめた。


「できれば私、こういうことは関わりの深い人にお願いしたいんだ。幸せを共有したいと思って。ギリギリになってこんな風に頼むなんて、すごく自分勝手だっていう自覚はあるんだけど……」
「麻衣子……」


そんな言い方をされたら、断れなくなってしまう。

深い関わりがなければ、もっときっぱり断れるのに、なんて。
逃げたくて、ずるいことを考えたくなってしまう。


「お願い、澪! 弟が就活でどうしても間に合わないってなったとき、だったら澪に頼もうって言い出したのは和史(かずし)なの」
「え……」
「澪は昔からそういうの得意だから、どうにか素敵なものを作ってくれるんじゃないか、って」


ど、どうにか、って。
適当すぎるでしょ……。


「澪なら、私たちの好みに合ったものを作ってくれるんじゃない? 和史のこと、よくわかってるし」
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