昨日の夢の続きを話そう
「香澄ちゃん、トマト好きなの?」


ぺろりと平らげたトマトピザのお皿を見て、前田さんが言った。


「はい、大好きなんです。野菜の中で一番」
「そうなんだ。旦那の実家が農家で作ってるんだけど、夏からたくさん貰って余っちゃってて。良かったら香澄ちゃん、食べてみない?」
「えっ、いいんですか⁉︎」
「うん! むしろ貰ってくれると助かるわ。うちの子野菜全般がダメで。特にトマトが苦手だからなかなか減らなくてね。悪くなっちゃったら勿体ないからさ」


困ったように眉を下げ、前田さんが溜め息を吐いた。


「ありがとうございます。とっても嬉しいです」
「じゃあ明日楽しみにしててね!」


満足げに微笑んだ前田さんと、イケメン店員さんが持ってきてくれたコーヒーを飲み干してから席を立ち、お会計をして花時計カフェを出た。

帰るときはちょうどイケメン店員さんは接客中だったので、前田さんは残念そうだった。


「あーあ、最後に目の保養しておこうと思ったのにな」
「はは、 明日も来ましょう。きっと見れますよ」
「そうだね!」


現場に戻り、午後の作業が始まる。

私は出土した土器に目印を立て、ひとつずつ位置を計測する前田さんの作業を手伝った。

……この食器で、ここの家族のお母さんはどんな料理を作ったのかな? お鍋とかかなぁ。

今はただの冷たくて固い土だけど、重ね
た年月をスキップして心をタイムスリップさせると、まるで温かい家庭に囲まれるような不思議な気分になっていたら、あっという間に一日のお仕事が終わる時間を迎えた。
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