昨日の夢の続きを話そう
私には、親がいない。
物心つく前に母が病死し、父は再婚。
思春期真っ只中だった私はお相手の方と、連れ子さんとちょっとばかし折り合いが悪く、私は父方のおばあちゃんとふたりで暮らしてた。
大学で建築学を学び、家具店に就職して六年が絶った頃、おばあちゃんが病気で亡くなった。去年の冬だった。
私は会社を休んだ。
気力なく過ごしていたら一ヶ月以上経ってた。
復帰するのは難しいのではないか、と店長に説得される前から、自分でも気づいてた。もう無理だ、と。これ以上会社に迷惑はかけられない。
尋常じゃないくらい体が重いし、なにより朝と夜の判別がつかない。
つまりどういうことかというと、時間の感覚がまるで無い。おばあちゃんとお別れした日に、心が置いてけぼりになっている。
そんなとき、そばにいてくれたのが大学のゼミの担当だった、島中(しまなか)先生だった。
卒業してからOGとして参加したゼミの飲み会のあと、大人の関係になったんだけど、本当は私はずっと憧れてた。
父親くらい年の離れた、先生に。
落ち着いた佇まい、グレーの髪の毛。
美味しいお酒の種類もそれを出す店も、私が生まれる前に撮られた面白い映画もたくさん知ってて、なにより年季の入った着心地の良いセーターみたいな温かさと匂いに安心する。
おばあちゃんと暮らしていた、ふたりの朝や夜の生活の音や、あらゆる料理の匂いが染み付いた築四十数年の一軒家。
ここに先生は毎日来てくれて、布団から出られない私に代わりカーテンを開けたり、閉めたりしてくれた。
先生の足音と日光。それだけで、だいぶ救われたと思う。
私はひとりじゃない。
時間は流れている、と。
物心つく前に母が病死し、父は再婚。
思春期真っ只中だった私はお相手の方と、連れ子さんとちょっとばかし折り合いが悪く、私は父方のおばあちゃんとふたりで暮らしてた。
大学で建築学を学び、家具店に就職して六年が絶った頃、おばあちゃんが病気で亡くなった。去年の冬だった。
私は会社を休んだ。
気力なく過ごしていたら一ヶ月以上経ってた。
復帰するのは難しいのではないか、と店長に説得される前から、自分でも気づいてた。もう無理だ、と。これ以上会社に迷惑はかけられない。
尋常じゃないくらい体が重いし、なにより朝と夜の判別がつかない。
つまりどういうことかというと、時間の感覚がまるで無い。おばあちゃんとお別れした日に、心が置いてけぼりになっている。
そんなとき、そばにいてくれたのが大学のゼミの担当だった、島中(しまなか)先生だった。
卒業してからOGとして参加したゼミの飲み会のあと、大人の関係になったんだけど、本当は私はずっと憧れてた。
父親くらい年の離れた、先生に。
落ち着いた佇まい、グレーの髪の毛。
美味しいお酒の種類もそれを出す店も、私が生まれる前に撮られた面白い映画もたくさん知ってて、なにより年季の入った着心地の良いセーターみたいな温かさと匂いに安心する。
おばあちゃんと暮らしていた、ふたりの朝や夜の生活の音や、あらゆる料理の匂いが染み付いた築四十数年の一軒家。
ここに先生は毎日来てくれて、布団から出られない私に代わりカーテンを開けたり、閉めたりしてくれた。
先生の足音と日光。それだけで、だいぶ救われたと思う。
私はひとりじゃない。
時間は流れている、と。