愛色SHERBET
空色
「すぅぅっ…」
胸いっぱいに澄んだ空気を吸い込んだ。
耳をすませば風がさーさーと静かな音を鳴らしている。つい昨日まで聞いていたせわしなく人の流れる音は、ここではもう聞こえないようだ。
「どうだ?愛華」
「いいところだね」
「そのうち、店が少ないだの交通の便が悪いだの言い出すんじゃないのか?」
父が私をからかうように言った。それを母は隣で聞いてくすくすと笑っている。
「そんなことないよっ」
今目の前にあるのは懐かしい景色だ。
白塗りの綺麗な家。
横一列に一戸建ての住居が立ち並び、その周囲をほとんど水田が占めている。
見上げれば、遮るものもなく一面に広がる空色。
雲一つない快晴らしい。
たしかにここは田舎だけど、離れていた間もずっと私の記憶に根付いて消えなかった大切な故郷だ。
私はここで生まれ、ここで幼少期を過ごした。
ここを最後に訪れたのは小学生の時以来だが、その時の記憶を高校2年生になった私は案外鮮明に覚えているようだった。
ようやくキミに会えるのかな。
ただただ膨らむばかりの期待感に、私は無意識にスクールバッグのストラップに手を振れた。
胸いっぱいに澄んだ空気を吸い込んだ。
耳をすませば風がさーさーと静かな音を鳴らしている。つい昨日まで聞いていたせわしなく人の流れる音は、ここではもう聞こえないようだ。
「どうだ?愛華」
「いいところだね」
「そのうち、店が少ないだの交通の便が悪いだの言い出すんじゃないのか?」
父が私をからかうように言った。それを母は隣で聞いてくすくすと笑っている。
「そんなことないよっ」
今目の前にあるのは懐かしい景色だ。
白塗りの綺麗な家。
横一列に一戸建ての住居が立ち並び、その周囲をほとんど水田が占めている。
見上げれば、遮るものもなく一面に広がる空色。
雲一つない快晴らしい。
たしかにここは田舎だけど、離れていた間もずっと私の記憶に根付いて消えなかった大切な故郷だ。
私はここで生まれ、ここで幼少期を過ごした。
ここを最後に訪れたのは小学生の時以来だが、その時の記憶を高校2年生になった私は案外鮮明に覚えているようだった。
ようやくキミに会えるのかな。
ただただ膨らむばかりの期待感に、私は無意識にスクールバッグのストラップに手を振れた。