一途な小説家の初恋独占契約
午前中の取材はつつがなく終わり、ジョーは寺下部長を始めとしたお偉方とランチに行ってしまった。
「汐璃も一緒にって駄々こねてたけど、汐璃は営業の仕事してるって丸め込まれて、連れて行かれたよ」
「嘘!」
「嘘じゃないよ。随分気に入られてるね。いっそ、汐璃が担当編集になればいいのに」
そう笑って話すのは、同期の秋穂だ。
営業部と編集部を行ったり来たりしている間にジョーはいなくなってしまい、うろうろしていたところを秋穂にランチに誘い出されたのだ。
いつもの喫茶店で、いつもの玉子サンドを頼む。
「アメリカの出版社とは、レーベル単位で契約してたし、本来なら編集部と作家は、直接やり取りしないんでしょう?」
「よく知ってるじゃない」
ジョーの作品のほとんどは、アメリカの女性向け恋愛小説レーベルから出版されている。
その出版社と清谷書房が日本語版の出版契約をしているので、普通は作家と直接やり取りする必要はないのだ。
でも、契約というものには、何でも例外事項というものがついている。
このレーベルとの契約内容の場合、「作家本人が拒否しない限り」清谷書房が翻訳出版したいものをして良いとなっている。
ここに噛み付いたのが、ジョーだ。
どういう理由か、まだ明らかになっていないけれど、ジョー本人が『シークレットロマンス』以外の出版を断っている。
正確には、保留にしている、というところだろうか。
編集部の方で、今朝もジョーに聞いたそうだけれど、まだゴーサインはもらえなかったそうだ。
何がジョーをためらわせているんだろう。
『シークレットロマンス』のときも、ジョーが日本語版を許可したのは、諸外国に比べてだいぶ遅かったという。
映画の製作が本決まりしてから、ようやく許可されたのだそうだ。
「汐璃も一緒にって駄々こねてたけど、汐璃は営業の仕事してるって丸め込まれて、連れて行かれたよ」
「嘘!」
「嘘じゃないよ。随分気に入られてるね。いっそ、汐璃が担当編集になればいいのに」
そう笑って話すのは、同期の秋穂だ。
営業部と編集部を行ったり来たりしている間にジョーはいなくなってしまい、うろうろしていたところを秋穂にランチに誘い出されたのだ。
いつもの喫茶店で、いつもの玉子サンドを頼む。
「アメリカの出版社とは、レーベル単位で契約してたし、本来なら編集部と作家は、直接やり取りしないんでしょう?」
「よく知ってるじゃない」
ジョーの作品のほとんどは、アメリカの女性向け恋愛小説レーベルから出版されている。
その出版社と清谷書房が日本語版の出版契約をしているので、普通は作家と直接やり取りする必要はないのだ。
でも、契約というものには、何でも例外事項というものがついている。
このレーベルとの契約内容の場合、「作家本人が拒否しない限り」清谷書房が翻訳出版したいものをして良いとなっている。
ここに噛み付いたのが、ジョーだ。
どういう理由か、まだ明らかになっていないけれど、ジョー本人が『シークレットロマンス』以外の出版を断っている。
正確には、保留にしている、というところだろうか。
編集部の方で、今朝もジョーに聞いたそうだけれど、まだゴーサインはもらえなかったそうだ。
何がジョーをためらわせているんだろう。
『シークレットロマンス』のときも、ジョーが日本語版を許可したのは、諸外国に比べてだいぶ遅かったという。
映画の製作が本決まりしてから、ようやく許可されたのだそうだ。