一途な小説家の初恋独占契約
「仕事のことはさておき、先生とはどうなのよ?」
「どうって?」
「ぶっちゃけ、初恋の人なんでしょ?」
玉子サンドが喉に詰まりそうになる。
慌ててアイスコーヒーで飲み下して、息を整える。
今朝までのあれこれを思い出して頬を赤らめつつも、私は首を振った。
「違うの。ジョーがホームステイしたときは、弟みたいな感覚だったし」
頼りなく見えたジョーに対し、私は妹を構うようにあれこれ世話していただけだ。
「そうなの? 意外だわ」
「意外?」
秋穂の感覚こそ意外で、私は食べる手を止める。
「汐璃が文通相手のことを話すとき、いつもすごく楽しそうだったから。先生には、何でも書いていたんでしょ? それって、一番信頼してたってことじゃないのかな?」
「うん、信頼はしてたよ。手紙を書くのも読むのも、いつも楽しみだったし……」
何を当たり前のことをと思う私に、秋穂は「それそれ」と机をコツコツ指で叩く。
「汐璃は、誰よりも文通相手のことを信頼しているように見えた。話を聞いている限りじゃ、歴代の彼氏たちよりね」
「え……?」
浅い付き合いに終わってきた、何人かの男の人たちが過ぎる。
何ヵ月か前に別れたばかりの人もいるのに、その姿は遠く、かなりがんばらないと顔も思い出せない。
中学生のとき、ジョーに会って以降、何人かの人たちに交際を申し込まれ、そして別れを切り出されてきた。
例外なく、全員そうだった。
自分から好きになった人じゃないけれど、自分なりに好きになったつもりでいた。
それでも、長くても数ヶ月もすれば、向こうから終わりを告げられてきた。
――汐璃ちゃんは、なかなか俺に心を許してくれないんだな……。
社会人になって早々に別れた人から、最後に言われた言葉だった。
あっけなく振られたつもりでいたけれど、そうじゃなかったのかな。
「どうって?」
「ぶっちゃけ、初恋の人なんでしょ?」
玉子サンドが喉に詰まりそうになる。
慌ててアイスコーヒーで飲み下して、息を整える。
今朝までのあれこれを思い出して頬を赤らめつつも、私は首を振った。
「違うの。ジョーがホームステイしたときは、弟みたいな感覚だったし」
頼りなく見えたジョーに対し、私は妹を構うようにあれこれ世話していただけだ。
「そうなの? 意外だわ」
「意外?」
秋穂の感覚こそ意外で、私は食べる手を止める。
「汐璃が文通相手のことを話すとき、いつもすごく楽しそうだったから。先生には、何でも書いていたんでしょ? それって、一番信頼してたってことじゃないのかな?」
「うん、信頼はしてたよ。手紙を書くのも読むのも、いつも楽しみだったし……」
何を当たり前のことをと思う私に、秋穂は「それそれ」と机をコツコツ指で叩く。
「汐璃は、誰よりも文通相手のことを信頼しているように見えた。話を聞いている限りじゃ、歴代の彼氏たちよりね」
「え……?」
浅い付き合いに終わってきた、何人かの男の人たちが過ぎる。
何ヵ月か前に別れたばかりの人もいるのに、その姿は遠く、かなりがんばらないと顔も思い出せない。
中学生のとき、ジョーに会って以降、何人かの人たちに交際を申し込まれ、そして別れを切り出されてきた。
例外なく、全員そうだった。
自分から好きになった人じゃないけれど、自分なりに好きになったつもりでいた。
それでも、長くても数ヶ月もすれば、向こうから終わりを告げられてきた。
――汐璃ちゃんは、なかなか俺に心を許してくれないんだな……。
社会人になって早々に別れた人から、最後に言われた言葉だった。
あっけなく振られたつもりでいたけれど、そうじゃなかったのかな。