一途な小説家の初恋独占契約
秋穂に言われて考えてみれば、私は普段顔を付き合わせていた恋人たちよりも、一度しか会っていないジョーの方が、心を占めていたのかもしれない。
少なくとも、私が一番心を許していたのは、ジョーだ。
嬉しいことも、悲しいことも、一番に話したくなる人は、ジョーだった。
私の心の一番深いところを知ってほしい人は、ジョーだった。
その反対も。
私が一番知りたい人は、ジョーだった。
「……でも、ずっとジョーのことは、友達だと思ってきて……」
「信頼や友情が恋愛に変わっても、少しもおかしいことじゃないと思うよ。ましてや、ラザフォード先生は男で、汐璃は女なんだから。しかも、向こうは飛び切りのイイ男と来た」
コンコンッと小気味よく、秋穂の爪が机を叩く。
ネイルについたパールが、私を励ますように光った。
「前に汐璃が言ってた一番好きな作家って、ジョー先生のことじゃないの?」
「……うん。実は、そうなんだ。ジョーって、手紙にちょっとした詩や物語も書いてくれてたの」
「そっか……そっか」
納得したように頷いた秋穂は、とても優しい顔をしていた。
「それは、惚れないはずがないって」
「……そうかな」
「そうだよ。気持ちが固まったら、先生にはきちんと伝えた方がいいよ。できれば、それは手紙じゃなくて、直接」
「うん……考えておく。ありがとう、秋穂」
「じゃあ、先生の写真ちょうだい。宣伝に使ってもいいやつ」
「えっ」
切り替えの早さに慄く。
「宣伝に使っていいかどうかは、ジョーに聞かないと分からないよ。プロに撮ってもらった方がいいんじゃない?」
「うーん。プライベートっぽい方が、反響があると思うんだけど。じゃあ、よそでは見せないから、ちょっとだけ見せてよ」
秋穂に見せるだけならと、二人で撮った浴衣の写真を見せる。
呉服屋さんを教えてくれたのは秋穂だから、このくらいしなくては。
もちろん、きちんとお礼も告げる。
「うはぁ……売れそうな写真」
「売らないよ!」
クスクス笑いながら、梅雨の晴れ間のようなお昼休みを過ごす。
私は、どこかでジョーを好きになるということは、これまでの友情や信頼関係を裏切ることになるんじゃないかと思っていた。
秋穂に言われて、改めてジョーときちんと向き合ってみようと思ったのだった。
少なくとも、私が一番心を許していたのは、ジョーだ。
嬉しいことも、悲しいことも、一番に話したくなる人は、ジョーだった。
私の心の一番深いところを知ってほしい人は、ジョーだった。
その反対も。
私が一番知りたい人は、ジョーだった。
「……でも、ずっとジョーのことは、友達だと思ってきて……」
「信頼や友情が恋愛に変わっても、少しもおかしいことじゃないと思うよ。ましてや、ラザフォード先生は男で、汐璃は女なんだから。しかも、向こうは飛び切りのイイ男と来た」
コンコンッと小気味よく、秋穂の爪が机を叩く。
ネイルについたパールが、私を励ますように光った。
「前に汐璃が言ってた一番好きな作家って、ジョー先生のことじゃないの?」
「……うん。実は、そうなんだ。ジョーって、手紙にちょっとした詩や物語も書いてくれてたの」
「そっか……そっか」
納得したように頷いた秋穂は、とても優しい顔をしていた。
「それは、惚れないはずがないって」
「……そうかな」
「そうだよ。気持ちが固まったら、先生にはきちんと伝えた方がいいよ。できれば、それは手紙じゃなくて、直接」
「うん……考えておく。ありがとう、秋穂」
「じゃあ、先生の写真ちょうだい。宣伝に使ってもいいやつ」
「えっ」
切り替えの早さに慄く。
「宣伝に使っていいかどうかは、ジョーに聞かないと分からないよ。プロに撮ってもらった方がいいんじゃない?」
「うーん。プライベートっぽい方が、反響があると思うんだけど。じゃあ、よそでは見せないから、ちょっとだけ見せてよ」
秋穂に見せるだけならと、二人で撮った浴衣の写真を見せる。
呉服屋さんを教えてくれたのは秋穂だから、このくらいしなくては。
もちろん、きちんとお礼も告げる。
「うはぁ……売れそうな写真」
「売らないよ!」
クスクス笑いながら、梅雨の晴れ間のようなお昼休みを過ごす。
私は、どこかでジョーを好きになるということは、これまでの友情や信頼関係を裏切ることになるんじゃないかと思っていた。
秋穂に言われて、改めてジョーときちんと向き合ってみようと思ったのだった。