一途な小説家の初恋独占契約
浅い眠りで夜をやり過ごし、夜が明けてから、顔を洗いに階下に下りた。
水を一杯飲み、いつものようにカーテンを開けていく。
良いお天気だ。

欠伸交じりに、和室と縁側を仕切る雨戸を開ける。

「……キャッ!」

雨戸を1枚開けただけで、私は腰を抜かしてしまった。

中途半端に手放した雨戸が擦れあって、けたたましい音を立てる。
その音に驚いたのか、ジョーが慌てて和室にやって来た。

「……汐璃? 汐璃、どうしたっ!?」

しゃがみこんだまま、声もなくジョーを見上げる。

「今……庭に、知らない人がいた」
「えっ」

ジョーが素早く庭に下り立ち、辺りを見渡す。
そのまま家の外の道路まで見に行ってくれたようだ。
早速顔を合わせたご近所さんに、昨夜の騒動を謝っているのが聞こえる。

私が行かなくちゃ……。

祖母の代から付き合いのある近所の人たちに、きちんとお詫びしなければならない。

そう思うのに、体が動かない。

注意深く周囲を見回しながら、ジョーが戻ってくる。

出て行ったときと同じ姿の私を目に捕らえると、パジャマ姿の私を持ち上げるようにして和室の中へ入れ、雨戸を閉めてしまった。

「不審者は見つからなかったけど、警察に言った方がいい。民間の警備サービスも依頼しよう。それから、汐璃の会社にも連絡して……」

小さく震えている私を認めると、ジョーは大きな身体で私をギュッと抱き締めてくれた。

「ジョー……こんなことして、誰かに見られたら」
「大丈夫。誰も見ていない。誰に見られても、構わない。僕は、汐璃が好きなんだから」

頭の上への頬ずりがずれて、私の額をジョーの顎が擦る。

……ちょっとチクチクする。
髭を剃る暇もなく、起きてすぐに駆けつけてくれたのだろう。

「……汐璃は、僕が必ず守るよ」

髪に落ちていたキスは、額からこめかみに移り、目尻に滲んだ涙を奪った。
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