一途な小説家の初恋独占契約
――まさか。

彼に……彼に、似ている気がした。

瞬きもできずに、すぐ傍に立ったその人を見上げる。

――でも、きっと違う。

彼ならきっと、こんなふうに私を見ない。

床に縫い付けられてしまうのではないかと思うほど、どっしりと重たい視線に感情はなく、引き締まった頬は、ピクリとも動かない。

美しい人だった。
そして、とても力強い。

聡明そうな額、力強い眉、太い鼻筋。
奥二重の瞳は眦に向かってすうっと細まって、僅かに下がり、眼光の鋭さを和らげる。
薄っすらと焼けた肌の中で、ふっくらと盛り上がった唇だけ柔らかく赤らんでいる。

その唇が、ゆっくりと開いた。

「……汐璃」

その穏やかな声を聞いた瞬間、否定しようとしていた声は消えた。

「ジョー……?」

私は自然と、そう聞き返していた。

「そうだよ、汐璃。久しぶり」

途端に、ジョーの頬が綻ぶ。

険しかった表情がどこかへ行き、ジョーの全身から懐かしさと親愛が伝わってくる。

「ジョー!!」

思わず飛びついた私を、ジョーは軽々と受け止め、しっかりと抱き締め返してくれた。

ジョー……。
ジョゼフ・早見・オリヴェイラ。
中学生以来の私の文通相手だ。

中学3年生のとき、一度会っただけだったけれど、私には分かる。
優しいヘーゼルの瞳、穏やかな語り口調は、あの頃のままだ。

「ジョー! どうしたの!? いつ日本へ? どうしてここに? 来日するなら、どうして教えてくれなかったの?」
「今朝、日本に着いたばかりだ。汐璃を驚かせたかったんだ。どう? 成功したかな?」
「大成功! なんで、手紙を返してくれなかったの? それから、それから……ああっ! 嬉しいっ!!」
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