一途な小説家の初恋独占契約
*
ジョーは、昼前に秋穂と共に東京駅へと着いていた。
ホテルに戻るというジョーと、清谷書房へ戻る秋穂とは、そこで別れたという。
編集部に戻ってしばらくしたところで、マスコミからジョー宛に問合せが入った。
本人に直接尋ねなければ分からない内容だったため、編集部が連絡してみたものの、ジョーとはつながらない。
「ジョー先生から連絡入ってない? ホテルに行ってみたら、引き払った後だったの……!」
慌てて営業部へ駆け込んできたのは、秋穂だった。
数時間前までは一緒にいたジョーがいなくなったのだ。
慌てるのは当然だった。
ジョーからは、私にも連絡が届いていなかった。
秋穂からは、無事に東京に戻って来たという連絡があったので、安心していたのに。
この後、清谷書房では、ジョーとの仕事を入れていない。
明日帰国するジョーの自由な時間だった。
「何でもないならいいの。でも、先生、汐璃と会えなくて元気がなかったから。それなのに、汐璃に会いにうちの会社に来ないから、おかしい気はしたんだよね。どこに行ったんだろう……」
「……私、探してくる」
どの道、明日ジョーは帰国してしまう。
次に会えるのは、いつになるか分からない。
こんな中途半端な状態で、離れ離れになってしまいたくない。
「それがいいよ。営業部には、編集部から話しておくから」
「ううん。仕事は休みにしてもらう」
これは、ジョーと私の話だ。
就業時間には、まだ時間がある。
無理を言って、今日は早退し、明日は休みをもらった。
ジョー関連だと、秋穂が口添えをしてくれたお蔭で、課長も渋々許可してくれた。
営業部の皆さん、ごめんなさい!
ジョーが見つかったら、営業の利益にもなるような話をしますから……!
明後日からは、我武者羅に働きますから……!
だから、今だけは見逃してと祈りながら、駆け出した。