一途な小説家の初恋独占契約



私鉄を5本乗り継いで1時間半。
その間、念のため、DVD販売会社や私の実家にも連絡してみたけれど、ジョーの居所は分からなかった。

最後の電車は、モノレールだった。

これには、ジョーとは乗らなかった。
実家から江ノ島までは、また別の私鉄が走っているからだ。

モノレールの駅を降りるとすぐ、江ノ島電鉄の駅がある。
江ノ電は、学校帰りの中高生で混雑していた。

あの頃のジョーと私も、どこかに紛れているような気がする。

鎌倉観光の定番、江ノ電にはジョーも乗った。
レトロな緑色の小さな車体にすし詰めにされながら、あちこちに行った。

ジョーと行ったところは、たくさんある。

二人で行った水族館、江ノ島。
部活の友だちと行った鶴岡八幡宮と小町通。
クラスの友だちと行った紫陽花寺に、学校行事で訪れた大仏様。
家族で行った遊園地やショッピングモール。

でも、きっと……。

江ノ電も通り過ぎ、私は真っ直ぐに海へと向かう。

ポツリと雨が降り出した。
雲が厚い。

いつも入れてある折りたたみ傘を取り出そうとして、それがないことに気づく。
レストランに行く前に、ジョーに渡したままだったかもしれない。

ジョーと一つの傘に入ったあの時……あんなに近くにいたのに、今はもう、お互いがどこにいるのかも知らずにいる。
アメリカと日本で離れていたときより、遠くにいる気がした。

雨が強くなって来た。

見渡してみても、コンビニはない。
検索でもすれば、近くにあることが分かるのだろうけれど、その時間も惜しくて、先を急いだ。
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